総合病院

省エネルギー事例

医療施設・福祉施設

2005年2月16日、京都議定書が発効し、温室効果ガス削減へ向けて世界レベルで取り組むこととなった。日本国内では同年4月、京都議定書目標達成計画を策定。いわゆる省エネ法も改正されている。そのなかで注目すべきは、大規模オフィスビル(ホテル、病院、百貨店など)も排出CO2削減対象になっている点だ。東京都内のある病院を例に省エネ対策の取り組みを見ていこう。

 

1日2,200人以上の外来がある都内有数大規模病院。

 

「この病院は病床数およそ600床、外来が1日に2,200人以上という都内有数の大規模なものです。寒くて乾燥するとウイルスが蔓延しやすいという見地から、空調をはじめとする各種ライフラインはきめ細かい指示のもとに運用しています」(施工担当者)

 

病院は生命を預かる場所。オペ室、ICU、病室、待合い室など、屋内環境の用途に応じてシビアな運用が求められる。

そのような建物で省エネ対策はどのように進めるのか。

 

「今回はメンテナンスの一環として運用提案を行いました。ハードウェアを新規導入すると多額の費用がかかってしまいます。そこで、ソフトウェアの調整だけで省エネを実現します。お金と時間をかけずにできる省エネ提案ですね。わかりやすくいうと、期待される環境は維持しながら空調の稼働時間を前後30分ずつ切りつめたり、暖房の室内温度を1度下げるなど、運用を見直していきます。結果として、金額ベースで年間5パーセントの削減に成功しました」(営業担当者)

 

ひと口に運用見直しというが、病院という特殊な施設だけにクレームなどはなかったのだろうか。

 

「運用見直しにあたっては、事前に十分な調査を行います。まず手術室やICUといった場所は設定を動かせません。そこで、外来や待合室のように、調整しやすい場所を探して着手していきます。当社はこの病院の建設当初から設計施工に関わっていて、施設の特性を知り尽くしていたということが強みになりました」(施工担当者)

 

「実のところこうした運用提案は、受け入れてもらえないことも少なくありません。なにしろこれまで安定運用できている設定を、一度見直して再構成するわけですから。ただ今回の病院は、院長自らの『夏に「寒い」、冬に「暑い」と言われるクレームはなくそう』というひと言があり、病院側と入念な打ち合わせを重ねることでスムーズに省エネ対策を実践できました。クライアント様との長期にわたる信頼関係が鍵だと実感しました」(営業担当者)